横浜地方裁判所 昭和60年(わ)3926号・昭61年(わ)340号 判決
右の者に対する相続税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官寺坂衛出席のうえ審理をし、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年二月に処する。
この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、
第一 小島葵、庄司孝英、笹俵利美、新開一史、二宮啓、井山健一、井山一男らと共に、井山くの死亡により同人の財産を相続した井山ハル、井山和栄、井山剛之の各相続人申告の代理人であった井山正一から、右井山ハル、井山和栄、井山剛之の各相続税申告について相談を受けていたものであるが、右小島葵、庄司孝英、俵利美、新開一史、二宮啓、井山健一、井山一男、井山正一と共謀のうえ、右井山ハル、井山和栄、井山剛之の各相続税について、架空保証債務を計上して課税価格を減少させる方法により相続税を免れようと企て、昭和五九年四月二日、埼玉県浦和市常盤四丁目一一番一九号所在の所轄浦和税務署において、同税務署長に対し、被相続人井山くの死亡により同人の財産を相続した右井山ハル、井山和栄、井山剛之の正規の相続税課税価格は別表(一)「正規の相続税課税価格」欄記載のとおり合計六億六一五八万四〇〇〇円であったのにかかわらず、右井山くには宍戸三男に対する四億八〇〇〇万円の保証債務があり、これを右井山ハル、井山和栄、井山剛之において別表(一)「保証債務額」欄記載のとおりそれぞれ負担することが確定したので、それぞれの取得財産の価格からこれを控除すると右井山ハル、井山和栄、井山剛之の相続税課税価格は別表(一)「申告相続税課税価格」欄記載のとおり合計一億八三七五万八〇〇〇円で、それぞれ遺産にかかる基礎控除額を控除して算出すると右井山ハル、井山和栄、井山剛之の相続税額は別表(一)「申告相続税額」欄記載のとおり合計五四一五万九六〇〇円である旨の虚偽の相続税申告書を提出し、もって、不正の行為により別表(一)「正規の相続税額」欄記載のとおり右井山ハル、井山和栄、井山剛之の正規の相続税額合計二億六〇七七万七一〇〇円と右申告相続税額合計との差額合計二億六六一万七五〇〇円を免れ、
第二 前記小島葵、二宮啓、中村晃三と共に、飯田一彦の死亡により同人の財産を相続し、かつ共同相続人の飯田悦子、飯田玲子の相続税申告の代理人であった飯田嘉翁から、同人、右飯田悦子、飯田玲子の各相続税申告について相談を受けていたものであるが、右小島葵、二宮啓、中村晃三、飯田嘉翁と共謀のうえ、右飯田嘉翁、飯田悦子、飯田玲子の各相続税について架空未払金を計上して課税価格を減少させる方法により相続税を免れようと企て、昭和五九年八月二三日、前記の所轄浦和税務署において、同税務署長に対し、被相続人飯田一彦の死亡により同人の財産を相続した右飯田悦子、飯田嘉翁、飯田玲子の正規の相続税課税価格は別表(二)「正規の相続税課税価格」欄記載のとおり合計一七億一四五〇万九〇〇〇円であったのにかかわらず、右飯田一彦には高畠玉枝に対して一三億九〇九四万円の未払債務があり、これを右飯田悦子、飯田嘉翁、飯田玲子において別表(二)「債務額」欄記載のとおりそれぞれ負担することが確定したので、それぞれの取得財産の価格からこれを控除すると右飯田悦子、飯田嘉翁、飯田玲子の相続税課税価格は別表(二)「申告相続税課税価格」欄記載のとおり合計四億三九一二万四〇〇〇円で、それぞれ遺産にかかる基礎控除額を控除して算出すると、右飯田悦子、飯田嘉翁、飯田玲子の相続税額は別表(二)「申告相続税額」欄記載のとおり合計五七六七万八〇〇〇円である旨の虚偽の相続税申告書を提出し、もって、不正の行為により別表(二)「正規の相続税額」欄記載のとおり右飯田悦子、飯田嘉翁、飯田玲子の正規の相続税額合計四億九二七〇万八七〇〇円と右三名の右申告相続税額合計との差額四億三五〇三万七〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示第一の事実について
一 第四回公判調書中の被告人の供述部分
一 被告人の検察官に対する昭和六〇年一二月六日付、同月二一日付各供述調書
一 第四回公判調書中の分離前相被告人小島葵、同庄司孝英、同俵利美、同新開一史、同二宮啓、同井山健一、同井山一男、同井山正一の各供述部分
一 小島葵(同月二日付、同月九日付一五枚綴のもの)、庄司孝英(四通)、俵利美、新開一史(二通)、二宮啓(同月二〇日付二通、同月二一日付)、井山健一(同月一三日付、同月一八日付、同月二〇日付)、井山一男(同月一四日付、同月一九日付、同月二一日付二通)、井山正一(同月一二日付、同月一三日付、同月一七日付、同月二〇日付二六枚綴のもの、同月二一日付)の検察官に対する各供述調書
一 井山和栄の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書
一 井山ハル、井山剛之、近藤う、安西ケイの大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 大蔵事務官各作成の保証債務調査書、有価証券調査書、未収地代調査書、土地調査書、公租公課調査書
一 大蔵事務官作成の同年八月二三日付領置てん末書(犯則けん疑者井山和栄に関するもの)
一 押収してある相続税の申告書綴一綴(昭和六〇年押第七二六号の五)、相続税の申告関係書一綴(同号の六)、遺産分割協議書及び領収証綴一綴(同号の七)
判示第二の事実について
一 被告人の当公判廷(第六回公判)における供述
一 被告人の検察官に対する昭和六一年二月一〇日付供述調書
一 分離前の相被告人小島葵、同二宮啓、同中村晃三、同飯田嘉翁の当公判廷(いずれも第六回公判)における各供述
一 小島葵(昭和六〇年一二月一五日付二通、昭和六一年二月七日付)、二宮啓(同年一月一四日付、同年二月一三日付)、中村晃三(同年一月二七日付)、飯田嘉翁(同月一七日付一七枚綴のもの、同月二二日付)の検察官に対する各供述調書
一 飯田悦子、飯田玲子、唐沢郁也、高畠玉枝の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 大蔵事務官各作成の未払金調査書、預金調査書、生命保険契約の権利調査書、損害保険契約の権利調査書、預り金調査書、申告調整金調査書
一 大蔵事務官作成の同年八月二三日付領置てん末書(犯則けん疑者飯田嘉翁に関するもの)
一 押収してある相続税の申告書綴一綴(同号の八)、相続税の申告書綴<遺産分割協議書添付>一綴(同号の九)及び相続税の修正申告書綴一綴(同号の一〇)
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも刑法六五条一項、六〇条、相続税法七一条一項、六八条一項に該当するところ、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、被告人を懲役一年二月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 上田耕生 裁判官 坂本宗一 裁判官白神文弘は転補のため、署名押印することができない。裁判長裁判官 上田耕生)
別表(一)
<省略>
別表(二)
<省略>